いまさっき思ったこと

あとで読み返したときになにかが生まれるかもしれないし、生まれないかもしれないけど、それはそれでいい

第4回コンテンツツーリズム学会・シンポジウムに参加してきました

昨日は法政大学新見附校舎でおこなわれた第4回コンテンツツーリズム学会・シンポジウムに参加してきました。
シンポジウムって名前のついたイベントに参加したのははじめてなんだけど、こういう場所にいくだけで賢くなった気分がしますね。かんちがいだけど。

ちなみにシンポジウム(symposium)というのは「研究発表会」「討論会」という意味らしいです。

f:id:takeshi:20150608151855j:plain

参加者はだいたい50〜60人くらいでした。
大学関係者(教授とか学生とか)と行政の人で半分弱くらい、残りは企業の人(旅行会社、鉄道会社など)で、ぼくみたいに個人で参加してるのはほとんどいなかったみたいです。

コンテンツツーリズムというのは、最後の安田先生のあいさつによれば「定義はない」らしいのですが、いちおう一般的には「アニメやドラマなどのコンテンツをフックに、観光客を誘致し集客促進すること」をさしています。
アニメファンの「聖地巡礼」と呼ばれてる舞台になった場所めぐり――有名なのは「らき☆すた」に登場する鷲宮神社ですね――などがいちばんわかりやすいコンテンツツーリズムです。

以下、発表内容のサマリーなど。

【基調講演】「国際共同ドラマ制作と地域発信」
新鞍 トシヤ((株)Journal Entertainment Tribute 代表取締役

f:id:takeshi:20150608151856j:plain

タイのドラマのロケ地選定を仲介した際の話をされてました。最近はフィルム・コミッションが各地にできていて国内外のドラマや映画のロケに協力的な自治体も増えていますが、海外のドラマに登場することでインバウンド観光を促進する可能性があると。
タイでは「九州」自体の知名度が低いので、福岡県や熊本県など県別でPRせずにまずは「九州」ブランドをアピールしていくという話はなるほどなあと思ったものの、観光エリアとして大きすぎるので現実的にはむしろ抽象的すぎてわかりづらくさせちゃってるかもしれないなあと思ったり。
でもじっさいにタイからの観光客は増えてるそうなので、やっぱりドラマのロケ地になるというのは一定の効果があるんですね。

【研究発表】「『パワースポット社寺』参詣の研究」
内川 久美子(法政大学大学院 政策創造研究科 博士後期課程/法政大学地域創造システム研究所 特任研究員)

f:id:takeshi:20150608151858j:plain

「パワースポット」はいまやブームどころかすっかり定着しましたが、2010年くらいからはじまってます。
発表ではふれられてなかったけど、江原さんがテレビに出てた時期と重なるし、あとは風水ブームなども影響してそう。あとでふれますが、パワースポット観光は一箇所じゃなく複数のスポットをめぐることになるので、コンテクスト性が強いですよね。伊勢神宮出雲大社明治神宮とか、あと箱根の九頭龍神社とか、全国のパワースポットをまわってる人とかけっこういそうだし。

【研究発表】「『ニューツーリズム』時代の観光マナー」
家長 千恵子(法政大学大学院地域創造システム研究所 特任研究員)

f:id:takeshi:20150608151857j:plain

従来の物見遊山的な団体旅行から個人が自由に旅行する時代になり、より観光地の生活圏に踏み入る体験型の観光プランが増えたため、その弊害として観光客のマナーが問題化してるんじゃないかという話でした。
事例としては築地市場があげられてましたが、こうした観光客を受け入れることを目的としていない場所に観光ニーズが生まれていて、そこにモラルの低い人や文化的な前提を共有していない外国人を招き入れてしまうことで、深刻な問題になるというのは全国的に起こっています。
こうした問題は観光客がルールを「知らない」ことに起因していて、周知徹底できれば抑制できるんじゃないかという仮説は正しいと思いつつ、モラルの問題は残るなと思いました。

【研究発表】「エヴァンゲリオンのキャラクター商品の開発と販売」
板津 啓二(株式会社ナガトヤ 営業推進部企画次長兼東京事業所長)

f:id:takeshi:20150608151859j:plain

 全国の観光地やSA/PAなどで販売されているおみやげをつくっている長登屋の方の話で、その地域限定の、地域とコンテンツをうまく関連づけた商品開発をすることの重要性を話されてました。
エヴァと箱根湯本で「第3新東京市に行ってきました」とか。東京ワンピースタワーの「悪魔の実グミ」とか。
これがコンテンツツーリズムなのかというと微妙だけど、まあ地域限定のおみやげを買いに旅行する人もいるとは思うので、いいのかな。

思ったこと

コンテンツツーリズムについては前にこういうことを書いてます。

もちろん0を1にできるというのは素晴らしいことで、とくに「すでにあるコンテンツ」の有効活用としてはいいと思うんですけどね。

毎年、大河ドラマの経済効果が発表されてますが、前に調べたときには翌年以降は元通りになっていて、そういう刹那的な需要増ではせっかく雇った人をすぐ解雇しなきゃいけなくなるとか、トイレや休憩所などつくった施設もムダになるとか、とても効率が悪いです。
(もっともオリンピックのように短期間でも十分儲かるからと一気に建設して、終了後に解体するという話もあるんですけどね)

ぼくとしてはコンテンツツーリズムの効果を認めつつも、それを少しでも持続させるようにそれらをつなぐ「コンテクスト」に焦点をあわせた施策を考えたいんですよね。

そうすることで競争相手だった自治体同士が、統一したコンテクストをPRするパートナーになれるし、観光客を奪い合うのではなく相互に送客しあえる間柄になれる。

それとマナーの問題はほんとにどうにかしないといけないですよね。
竹田城にいったときも立入禁止区域に入る若者や、国史跡は火気厳禁なのに喫煙するおじさんはぼくも何度も見ました。監視を強化するのも限界があるし、たぶんそっちにいっちゃうと見学ルート制限とかどんどん残念な方向に進んじゃうので、なんとかマナーやモラルのところで解決したいものです。

JALのCMで使われていた北海道の「嵐の木」も観光客(まあ嵐のファンだよね)のマナーがひどくてゴミの投棄とか畑に踏み入るとかが頻発して、地権者が木を増やしちゃったという話がありましたが(5本じゃなく7本にしちゃったらしい)、こういうのはほんとに残念です。

あとこれはコンテンツツーリズムの短所でもあるんだけど、観光客はコンテンツに興味があるだけで、その地域自体を大事にしようという気持ちが薄いので問題行動を起こしやすいんですよね。
「旅の恥はかき捨て」なんて言葉がありますが、「嵐の木」を見に行った人は二度と訪問しないから平気で悪いことしちゃう。

こういうのをちゃんとコミュニケーションデザインとか行動心理学的なアプローチからも対策を講じて、その知見をシェアしていけるといいですね。

人見知りなぼくにはアウェイ感満載だったんですけど、こうやっていろんな方が取り組まれていることの話を聞くと、刺激になっていいですね。

ちなみに参加費は無料だったので、会場で販売されてたこの本を購入しました。

コンテンツツーリズム入門

コンテンツツーリズム入門

 

あと、この2冊は前に読みましたがおもしろかったです。コンテンツツーリズムに興味をもった人にはオススメできます。

n次創作観光 アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性

n次創作観光 アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性

 
物語を旅するひとびと―コンテンツ・ツーリズムとは何か

物語を旅するひとびと―コンテンツ・ツーリズムとは何か

 

 

バーティカルメディアとネイティブアドの可能性(セミナーレポート)

昨日は「宣伝会議インターネットフォーラム2015」に参加してきました。
関東に住んでたときはほぼ毎年来てたんですけど、ずいぶんひさしぶりな感じがします。

いくつかセッションを受講したんですが、ネイティブアドのセッションがあったのでフォトレポート*1でご紹介。

ジャンル特化型メディアで広がる、DeNAのネイティブアド
~鋭いコンテンツ訴求でユーザーの心をつかみましょう~

株式会社ディー・エヌ・エー
渉外統括本部広告ビジネス部 部長 長村 禎庸 氏

 まず最初にDeNAが定義するネイティブアドについての話がありました。

f:id:takeshi:20150603091314j:plain

「ネイティヴアドとは、広告がコンテンツになった状態」という定義とおっしゃっていて、上記のスライドにあるように、その広告=コンテンツをメディアと広告主がいっしょにつくるんだということなんですが、これって「ネイティブ」のニュアンスが消えちゃってると思うんですよね。

こないだLINEの谷口さんのセミナーでは、「見た目のネイティブ」と「中身(内容)のネイティブ」とわけて話されていて、ようするにインフィード型のように上下の通常コンテンツと同じデザインで表示される広告「枠」だったり、旧来の記事広告のようにコンテンツ自体がほかのコンテンツと同じような構成になってたりするネイティブアドをわりと的確に分類されてるなあと思ったんですけど(NAVERスポンサードまとめのように両方を満たしてる広告もあります)、たぶんDeNAでは後者の記事広告型(スポンサードポスト)しかやってないので、「広告がコンテンツになった状態」と定義しているんでしょうね。

余談ですけど、「ユーザーが喜ぶ」とか「おもしろい」というのはネイティブアドの定義にはなんの関係もないとぼくは思っていて、それはあくまでも「より多くの人に届けるための手段であり手法」であって、おもしろくなかったらネイティブアドじゃないかというとそんなことはないと思うわけです。
(手法なのでバズらせるためにわざと「喜ばない」のをつくることだってあるかもしれませんよね)

このへんの定義論は話が尽きないわりにはたいしておもしろくないのでここで止めておきます。

このセッションの話題は「Palette(DeNAパレット)」の紹介で、ようするにバーティカルメディアのほうが読者がはっきりしているので、しっかりアピールできるし購買などの行動につなげることもできますよ、という話でした。

f:id:takeshi:20150603091315j:plain

f:id:takeshi:20150603091316j:plain

いわゆる「枠から人へ」論のコンテキストで、ここはぼくも同意見で、より正確には「枠から人々へ」と呼べる程度のボリュームに対して、広告を届けていけるというのはもっともっと評価されるべきで、そこでいろんな施策にチャレンジして深堀りしたいなあと思います。

ちなみにDeNAではこんな感じで、年齢・性別ほぼ全方位をカバレッジしているとおっしゃってました。

f:id:takeshi:20150603091318j:plain

まあこういうマトリクスを出しちゃうと、Yahoo!のがすごいってなるんだけど、各メディアごとに異なる切り口で記事広告をつくっているそうです。

ここは昨日聞いてて「まっとうだなあ」と感じたところですね。

f:id:takeshi:20150603091319j:plain

f:id:takeshi:20150603091323j:plain

実例としてAirbnbの事例が紹介されてました。MERY、iemo、Findtravel、それぞれで独自の切り口で紹介しています。

f:id:takeshi:20150603091327j:plain

まあじっさいのところは複数メディアに掲載できる広告主は(商材的にも予算的にもハードルが高いので)少ないと思うんですけど、こうやって多面的・立体的に魅力を伝えていく企画を考えるのは楽しいだろうなあ。

バーティカルメディアでのネイティブアドには次の5つの可能性(使いどころ)があるそうです。

f:id:takeshi:20150603091317j:plain

  1. イメージチェンジをせまる
  2. 具体的な利用シーンに自分を重ねてもらう
  3. 世界観にひたってもらう
  4. 価値の翻訳
  5. アクションをうながす

たぶんこのへんの売り文句って女性誌や専門誌でよく見られる項目ですね。

ネイティブアドの効果測定についてはほんとに悩ましくて、ブランディングとかエンゲージメントとか数値化しづらいもの(あるいは中長期的にしか測りようがないもの)を軽視しちゃいけないとは感じつつ、直近の売上や来店などを無視するわけにもいかないので、アクションをうながす部分は大事ですね。
(ま、まったくアクションにつながらない広告がブランディングにだけ貢献できるとは思えないけどね)

f:id:takeshi:20150603091325j:plain

DeNAの場合はキュレーション(=まとめ)系のメディアが中心ですけど、これが編集長や編集部員、あるいは専属モデルなどがもっと前面に出るメディアなら、よりアクションにつなげることもできると思います。
(とはいえ、閲覧者のボリュームではキュレーション系のが多くなるでしょうから、実数ベースではあまり変わらないかも)

さらにPaletteというプラットフォーム間で相互送客できるのも強みだとおっしゃってました。

f:id:takeshi:20150603091326j:plain

このへんはOutbrainやpopIn Discoveryなどを利用すれば擬似的にできなくもないのですが、記事本文中で相互リンクできたりするのは同じ会社で運営するからこそのメリットかもしれませんね(じっさいにやってるかは知らないけど)。

個人的にはネイティブアドというのは、読者を理解し、読者から信頼を得たメディアが、これまでの関係性の中で、全責任を背負って届ける広告、だと定義しているので、その点ではバーティカルメディアのほうが向いているはずだと思うんですよね。
(余談ですが、読者を理解するもっとも簡単な方法は、自分が読者代表になる=自分が読みたいコンテンツを載せる、です)

あとはバーティカルメディアのネットワークを事業者間でつくっていく動きが今後増えていきそうな気がします。
「Syn.alliance(シンドットアライアンス)」のように資本的な結びつきがなくても、広告商品レベルで組んでいけると思うし、過去のバナーネットワークと同じだと思えばそんなにむずかしくなさそうですしね。あるいは広告主側で勝手に作っちゃうってのも出てくるかも。複数のメディアのネイティブアドを購入して、その記事間でリンクしちゃうとか。自社サイトにハブとなるページを用意してもいいでしょうしね。

けっきょくコンテンツマーケティングというのは「誰に」「どうやって」届けるのかというディストリビューションの部分が課題で、そのためにオウンドメディアを育てたりソーシャルメディアのフォロワーを増やしたりするんですけど、それらはあくまでも手段のひとつにすぎないので(もちろんコスト効率の面で中長期的にはメリットがあるんですが)、短期的にはネイティブアドとかをうまく使っていったほうがいいんじゃないかなと思います。

最近はソーシャルメディアで影響力を持っているライターを指名する企業も増えてますが、これも目論見は同じですよね。
(まあ拡散まで求められるライターさんはなんとも不憫だと思うけど)

いろんなメディアを抱えてるって点ではイードとかもあるし、それこそインプレスのように長年バーティカルメディアを複数運営してきている企業もあるので、これからおもしろい動きが出てくるかもしれませんね。

[以下余談]
ちなみに、こんな感じでMAUが発表されるわけですけど、こないだ書いたようにいまのご時世、アプリ内ブラウザ(WebView)が重複カウントされてるわけですから、じっさいにはこの何分の一でしかないってことはわかっとかないといけないかなと。

f:id:takeshi:20150603091322j:plain

*1:最近は録音・録画はNGだけど撮影はオッケーなイベントが増えましたね。ほんとにありがたいことです。もっともパシャパシャとうるさい人も多いんだけど、無音カメラアプリとか知らないのかな

正確なユーザー数を知る方法はもうないのか(ユーザー数の水増され問題)

メディアの媒体資料などで出てくる訪問者数(ユニークユーザー数)は、Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールのデータを引用する事が多いと思いますが、前々から指摘されているように、昨今はアプリ内ブラウザ(WebView)で閲覧するケースが増えているため、このあたりの数字がいろいろおかしくなっています。
 
具体的には
  • アプリ内ブラウザは独立したアクセスとなるため、訪問者数がじっさいより多く出てしまう
  • その反面、ユーザーあたりのPV数などは小さくなってしまう(セッション単位では正しい)
といったことが起きています。
 
悪意があって水増しするのではなく、いうなれば「水増され問題」が起きているわけです。
新聞業界における押し紙の問題と同じで、あるいは雑誌等における出版部数と実売部数のギャップと同様、もはやウェブにおいても正しい数字が見えなくなってしまっているということは認識しておいたほうがいいですね。
 

前からべつに正確ではなかった

もっともウェブの数字は以前から正確ではなかったという指摘もあるでしょう。
じっさい、自宅のパソコンと会社のパソコンで開けば2ユーザーになりますし、ケータイやスマホで閲覧すればさらに重複するわけで、訪問者の実数とアクセス解析ツールの数字にはこれまでもギャップはありました。
 
いま起きているのはそれがよりひどくなっていること、もうどのくらいずれているのか推測すら困難な状況にあるということです。
 
たとえば
  1. 朝起きて、ブックマークからサイトを表示(スマホ × safari
  2. 通勤中にFacebookを見ていて、フィードに流れたリンクを踏んでサイトを表示(スマホ × Facebookアプリ)
  3. 昼休みに届いたメルマガのURLをクリックしてサイトを表示(スマホ × Gmailアプリ)
  4. 帰りの電車でリツイートされてきたURLをクリックしてサイトを表示(スマホ × Twitterアプリ)
  5. 自宅に帰ってノートパソコンでサイトを表示(PC × chrome
  6. 寝る前にベッドでぐうたらしながらタブレットでサイトを表示(タブレット × safari
というような行動をとった場合、これはすべて別ユーザーとなります。
(ま、いま家に帰ってパソコン開く人も少ないと思うけど)
 
極端な仮説として、もし全員が上記のような行動をとっていた場合、レポート上は60万ユーザーと表示されていても、実質10万ユーザーということになります。
 
ちなみにアプリを再起動した場合、PHPのセッション変数(Cookieベース)はちがうものが発行されたんですけど、Googleアナリティクスの場合も別セッション、別ユーザーということになるんですかね(その場合、さらに水増しが大きくなります)。
詳しい方、教えてください。
 

メディア運営者も事実が知りたいはず

上記の例のように、自分たちのメディアの訪問者数が60万人なのか、10万人なのかというのはまったく規模感の異なる話で、今後の戦略を考える材料としてサイト運営者も正確な数字は知りたいはずです。
(それを正直に開示するかはサイトによりけりでしょうけど)
 
仮に物販や課金コンテンツを提供する場合、想定客の母数としてサイトの訪問者数を仮に置くことが多いですけど、その数字が5倍以上にずれちゃうと話にならないですし。
 
Googleアナリティクスでは「サイトにログインすれば」という条件付きで名寄せする機能もありますが、コンテンツ系のサイトではログインしないで閲覧するユーザーが大半なので(というかそもそもログイン機能がないサイトも多い)、残念ながらあまり役に立ちそうにありません。
 
UserAgentやIPアドレスを組み合わせてセッションを結合することとかできないかなあと思ったんですけど、オフィスのように複数人が利用する環境下では軽率に同じ人のアクセスだと判定すると問題ですしね。
そもそもそれを防ぐためにCookieベースで人ごと(じっさいにはブラウザごと)にわけるようにしたのであって、今度は同一人物複数ブラウザな世界が来るなんて、なんとも皮肉な状況です。
 
DMPがなんとかしてくれないかなあと思ったりもしたんですけど(ぜんぜん正しい使い方じゃないけど)、けっきょく名寄せするキーが必要なのでなかなかむずかしそうです。
 

とりあえずおさえておくべき事実

Googleアナリティクスに代表されるアクセス解析ツールの訪問者数(ユニークユーザー数)は残念だけどもうほとんど信用できない、というのが結論なんですけど、現象としておさえておくのはこのあたりでしょうか。
  • 世の中のウェブ閲覧者の一般的な傾向として、スマホの普及とソーシャルメディア経由の訪問数増加によって、細切れのアクセスが増え、その状況下においてはセッション数は増加し、反対にセッションあたりのPV数は少なくなる
  • 昨日はFacebookアプリで、今日はsafariでアクセスした人は連日訪問しているにもかかわらず、データ上では「1日だけ訪問した、ふたりのユーザー」ということになってしまうように、リピーターを正確に計測できていないケースが増えている(もしかするとリピーター数はもっと多いかもしれません)
お金をかけるとか、複数事業者で合同調査すれば見えてくるならまだしも、ツイッターFacebookGoogleを巻き込まないかぎり、正確な数字がとれないとしたらもう絶望的ですよね。
 
訪問者数は信用できないし、セッション数もセッションあたりPV数が1に近づいている状況では意味のない数字になってしまうので、もうPV数だけ見とくかというのもあながちまちがった話ではないんですけど、キュレーションアプリのようにページを「先読み」しちゃう場合は、じっさいに見てないのにカウントされてしまうという問題があります。
 
また、最近Facebookがはじめた「Instant Articles」のように、コンテンツを外部配信して自サイト以外での閲覧を許可している場合、カウントされないけど読まれている幻のPVが生まれるので、PV数もいまいち使い勝手の悪いデータです。
(これはRSSリーダーで全文配信しているときから起きてる話ですけど、規模がちがってきてるのが現在の問題)
 
だからこそ滞在時間や読了率といった「量」より「質」の議論が昨年あたりから活発になっているわけですけど、そもそも「量」が正確に測れなくなって信用できなくなっちゃったという背景は理解しておいたほうがいいのかもしれませんね。
 
[追記]
事実認識がまちがってたらぜひ教えてください。

インディーズ・ウェブメディア情報交換会をしませんか

攻城団やまんがseekのような個人で運営するウェブサービス(それを仮にインディーズ・ウェブメディアと呼ぶ)のノウハウを共有する集まりを開催したいなあと思っています。

趣味であれ、道楽であれ、あるいはいつかはそれで食っていくという野望があるにせよ、仕事の合間に開発して運営するインディーズ・ウェブメディアはけっこう個々人でいろんな創意工夫をしているはずで、そういう情報交換をする機会って、聞かれることもほとんどないのであんまり表に出てこないですよね。

 
サーバー選定の話とかはわりと出てきたりもするけど(だいたいAWSかさくらVPSあたり)、たとえばユーザーサポートにどういうツールを使ってるかとか、CMSはなにを使っているのか(自分でゼロから作ったのか)とか、そもそも個々のページは動的生成なのか静的生成なのか、そしてそれはなぜなのかとか、ソーシャルメディアをどう利用しているかとか、コンテンツの企画や作成・更新などはどんなふうに進めているのかとか、いろいろ知りたいことはあるんですよね。
 
インディーズ・ウェブメディアの場合、自分が使いたいとか、自分がほしかったとか、いわゆる自分ニーズではじめてる人が多いと思うんだけど(なかにはアフィリエイトや広告収入を目論んで開発した人もいるかもしれないけどそれはちょっと忘れて)、だからこそ時間管理がとても重要になってくる。
 
やりたいことに費やす時間を最大化するためには、やりたくないことに奪われる時間を最小化する必要があるわけですよね。
で、この場合の「最小化」は「効率化」とイコールじゃなくて、効率化は最小化のためのアプローチのひとつでしかなくて、わかりやすくいえば「やらない」ことを決めることで作業そのものを無にしちゃうとか、削れるところはどんどん削って、つくっていく、生み出すことに時間をかけたい。
 
たとえば攻城団ではコメント欄はスパム対策とか負荷対策がめんどくさいので外部サービスを使ってアウトソーシングすることにしたんだけど、DISQUSのSSO(シングルサインオン)対応ってぜんぜん日本語の解説ページがなくてけっこうハマったんですよ。
ほかにもなるだけ月々の支出をおさえるために、画像はさくらの500円くらいのレンタルサーバーに置くようにしたり、更新があったページだけを抽出して静的なHTMLを再生成してアップする手順を自動化したり、ケチケチ運営のノウハウはそこそこ持ってます。
 
仕事ではエンジニアだったり、デザイナーだったり、あるいはぼくみたいに企画やマーケティングにたずさわってる人が、ある意味では自らの器用さを全開放してつくってるのがインディーズ・ウェブメディアなわけで、だからこそ得手不得手が個々人でちがうはずだし、ギブアンドテイクも成立しやすいんじゃないかなと思うんですよね。
 
その結果として、ネット上におもしろいサイトやサービスが増えていけばひとりのユーザーとしてもすごく楽しくなるし。
 
インディーズ・ウェブメディアを運営している方、ぼくと雑談しませんか。
でもってそれがもし公開可能で、後続者にとって価値のありそうなノウハウならどんどん残して開示していけるといいですよね。
そういう動きそのものがとてもネット的だと思うし。

「囲い込まない」マーケティング(Amazonペイメント良さげだね)

いよいよ日本でもはじまったAmazonペイメント(正確にはAmazonログイン&ペイメント)。

ちなみに日本はアメリカ、イギリス、ドイツ、インドについで5か国目らしいです。
前からいつからはじまるのかとワクワクしながら待ってたサービスで、ASPが順次対応していくだろうからモール以外のECでは大きな変動が起きそうです。
 
すでにフューチャーショップは対応してるそうですね。こういう場合は「最速」がなによりのマーケティング。
 
楽天などのモールを使うか、ASPや自社開発のプラットフォームで独自展開するかのメリット・デメリットについてはまあ大小いろいろあるわけですが、「初回購入のハードルの高さ」はけっこう重要度かつ深刻度が高い問題ですね。
いまやモール内のマーケティングがほとんど期待できない(効果はあるけどお金がすごくかかるので利益を出しづらい構造になってしまってる)状況において、この会員登録の手間を回避できるということは最大の優位点かもしれません。
 
通常のネットサービスの場合、「メアドだけで登録できるようにしよう」というような感じで、登録の際の必須項目を減らすことで(あとから追加で入力してもらえばいいと割りきって)、このハードルを下げることはできるんだけど、ECの場合は発送先の住所等はどうしても聞かなきゃいけないので、項目を減らすにも限度があるのです。
 
だから「決済代行」だけでは、「クレジットカード情報を預けるのが不安」という問題の解決にはなっても、「登録の手続きがめんどくさい(あるいは個人情報を預けるのが不安)」という問題の解決にはならないのです。
 
とはいえ、決済代行だけでもゼロから信用を獲得していかなきゃいけない店にとってはありがたいソリューションなんですけどね。
(クレジットカードの情報は店側も漏洩リスク等を考えると積極的には持ちたくないので)
 
じっさい決済代行のサービスはいろいろあります。
主だったところだけでもこんな感じ。
詳しい比較表はきっと誰かがつくってると思うので割愛しますが、今回のAmazonペイメントがすごいのは、Amazonに登録してある個人情報を決済に利用したEC側に渡せるという点なんですね。
 
こちらのECzineの記事にじっさいの画面の拡大写真があるけど、チェックボックスにチェックを入れるとEC店舗側の会員情報として記録することができます。

なんていうか、このへんの「囲い込まない」ことのマーケティング的なメリットをよくわかってますよね、Amazonは。
強者だからやりやすいのはもちろんあるんだけど、じゃあドコモがやれたかとか、Yahoo!がやれたかとか考えると、いかに独占欲の呪縛が強いかがよくわかります。
 
ユーザーの利便性を高めつつ、EC側の課題解決も実現する。
いいですよね。
 
もちろん二重管理になるわけだから(お客さんが引っ越したりした際に)情報の更新が滞るとかリスクもあるんですけど、それはすでにいま存在するリスクなので新しく生まれるリスクではないですし。
 
悪用するとしたら、すっごい安い商品を販売することで、Amazonの顧客データを(それもうっかりさんのデータを)大量に抜き取ることができるかもしれないけど、まあこういうのはドロップシッピングでも起きてた話だし、きっとAmazon側ですぐ止めちゃうだろうから大事にはならないと思います。
 
ま、個人的にはAmazonになら囲い込まれてもいいやって思うくらい散財してきてますけどね。
 
[追記20150515]
通販ソリューション展でフューチャーショップさんのブースで開催されたミニセミナーを聞いてきました。立ち見で30人くらいは聞いてたかな。
新しい情報としては、すでに数百社から問い合わせがあって対応に追われてるってことと、Amazon側に渡る情報は金額のみで「なにを買ったか」までは渡らないということです。
まあ出荷・配送はこっちでやるので購入した商品情報は渡す必要がないですからね。
(もちろん「誰が買ったか」は筒抜けですけどね)
 
以下は今日のセミナーの様子です。
写真は撮れなかったんですけど、フューチャーショップさんがカゴ落ち率(カート放棄率、カートに入れたけど買わずに離脱した人の割合)が7割もあるとおっしゃってて、そんなにあるのかと思いつつ、スマホの場合はいったりきたりが面倒なので、ブックマーク代わりにカートに入れたりするから比率はどうしても高くなるよねと思った。
ぼくもこないだゾゾタウンで買ったとき、まさに気になった商品をとりあえずカートにどかどか入れたから。
 

f:id:takeshi:20150515171344j:plain

f:id:takeshi:20150515171345j:plain

f:id:takeshi:20150515171346j:plain

f:id:takeshi:20150515171347j:plain

f:id:takeshi:20150515171348j:plain

f:id:takeshi:20150515171349j:plain

f:id:takeshi:20150515171350j:plain

f:id:takeshi:20150515171351j:plain

f:id:takeshi:20150515171353j:plain

f:id:takeshi:20150515171352j:plain

f:id:takeshi:20150515171354j:plain

f:id:takeshi:20150515171355j:plain

f:id:takeshi:20150515171356j:plain

f:id:takeshi:20150515171357j:plain

f:id:takeshi:20150515171359j:plain

f:id:takeshi:20150515171358j:plain

f:id:takeshi:20150515171400j:plain

f:id:takeshi:20150515171401j:plain

f:id:takeshi:20150515171402j:plain

f:id:takeshi:20150515171403j:plain

f:id:takeshi:20150515171404j:plain

f:id:takeshi:20150515171405j:plain

ネイティブアドの広告表記に「PR」はアリなのかナシなのか

電通パブリックリレーションズの細川さん(WOMマーケティング協議会事務局長もなさってます)がITmedia マーケティングに書かれている記事で、ネイティブアドの広告表記で「PR」はないんじゃないのと書かれてます。

まったくそのとおりで、ぼくも「広告」「AD」と「PR」が並列に置かれるのはしっくりこないと思ってました。
ほかにも紙メディアでよく見るのが「提供」や「協力」というクレジットですかね。このへんも「あわよくばやりすごそう」という不誠実なにおいがする。

ようするにお金を主とした(お金以外の利益供与のこともあるから限定しない書き方をしますけど基本的には広告費のことです)やり取りがあることを示すのが広告表示で、同時にそれはただ書けばいいってもんじゃなく、読者にわかるように伝えなきゃいけないわけですから、そこに「気づかれなきゃラッキー」的な発想は含まれちゃいけない。

このへん、そのうち整理したいなと思ってたところです。

文句なしにOKな表示 「広告」「AD」「広告企画」
判断がわかれそうな表示 「提供」「タイアップ」
微妙で不誠実な表示 「PR」「協力」「コラボ記事」「企画」

「広告」って入ってたら見てもらえなくなる、ネガティブなバイアスがかかってしまう、という危惧はよくわかるんですけど、見た目がほかのコンテンツと区別しづらいネイティブアドでそれやっちゃったら致命的だと思うんですよね。

ぼくは広告のチカラを信じたいし、広告費がまわるからつくれるクオリティのコンテンツがあると思うし、そういうのは読みたいけどなあ。

コンテンツ内に自社の宣伝色を抑え、本来の意味での「スポンサード」をしたら(「世界の車窓から」と富士通みたいに)、その企業の好意度はきっと上がるはずです。
もちろん間接的になるので広告主側の評価がむずかしくなるんだけどね。

そもそも「PR」にしたからといって閲覧者数や読了率が大きく変わるとは思えないんだけど、ここはぜひ調査してもらいたいところ。

ネイティブアドの評価指標で重視するのはブランドリフト、クリックスルー、ソーシャルメディアでの拡散

ウォール・ストリート・ジャーナル』にネイティブアドの評価指標についての記事がありました。

eMarketerによれば、USでのネイティブアドに投下される予算は増加すると予測されていて、BuzzFeedのような新興メディアだけでなく、New York Times や The Wall Street Journa といったメジャー紙も参入しているという現状を伝えています。
 
その一方で、ネイティブアドを用いた施策をどう評価するのかについてはアメリカでも試行錯誤中みたいです。
ANA(全米広告主協会)の調査結果が引用されていましたが、主要な指標として「ブランドリフト(17%)」「クリックスルー(15%)」「ソーシャルメディアでの拡散(15%)」が挙げられていました。
 

f:id:takeshi:20150420135223p:plain

(2014 ANA Native Advertising Survey Data Chartsの項目名を和訳)
 
たぶんこのへんは日本でも同じような結果になりそうな気がします。
 
その一方で(ブランドリフトが重要視されるのはよくわかるのですが)、こないだも話してたんですけど、そもそもメディアと読者がこれまでに築いてきた関係性を前提にメッセージを届けていく広告商品であるネイティブアドにおいて「ソーシャルメディアでの拡散」が問われるというのは本質的に矛盾しているような気もしなくはないです。
結果としてふだんの読者以外に届いてしまうわけで、彼らとはメディアとの関係性が希薄なわけですから(場合によっては初めての人もいるかもしれません)、いろんな前提を共有しないまま広告コンテンツを見せることになります。
 
このあたりは「ネイティブアドにできること」と「ネイティブアドに求めること」がいまいちすりあっていないことが原因なのだと思うので、今後いろいろと(成功も失敗も)事例が共有されていって、手法としてのネイティブアドの効果的な使い方が定着していけば、ミスマッチが減っていくのかもしれませんね。

支持率の数値化(最愛戦略の指標選びとしてのNPS)

最愛戦略について話をすると、だいたいの方には共感や賛同といったポジティブなリアクションをいただきます。

で、「うちはどうすればいい?」という質問に対しては、こないだ書いたように「いまいるお客さんが支持してくださってるポイント」を明らかにして、そこにできるだけ多くの予算を配分して強化していくのが答えです。
 
難解なのは「どうやって支持されてるポイントを発見するのか」と「どうやって施策が(最愛というゴールに向かって)前進しているか、あるいは後退しているかを把握するのか」という問題です。
 
もちろん売上が伸びているとか、リピート率が上がっている、新規顧客が増えているといった数字には影響が出るはずだし、そこはチェックポイントのひとつではあるけれど、結果だけに着目してしまうのは危険なことです。
(いいかえればお客さんの信頼を損ねていいなら、売上を伸ばす策の選択肢は一気に増えます)
 
また売上に目立った変化が生じる前に、その予兆として現れる数字を見つけないと、せっかく好転しはじめているのに施策をやめてしまうこともありますよね。
だから売上以外にそれなりの確度の数字がほしいのです。
 

ぶっちゃけ支持率の数値化はむずかしい

だからプロセスにおいて、なんらか「支持率」を測る指標が必要で、これまでアクセス解析の数字(訪問頻度や滞在時間)をゴニョゴニョして出そうとしてきたんだけど、これがなかなか悩ましくて。
  • 訪問頻度が高いほど支持率は高いといえるのか
  • その場合、何回以上訪問すると「支持者」と捉えていいのか
  • 毎日訪問するけど、一度も購入したことがない人をどう評価すべきか
たとえば「20回以上訪問してくださったユーザー」を「常連」と位置づけて、訪問者全体における常連の割合や実数の推移を測ることで、常連の期待を裏切ってない、信頼を損ねていないという状態がある程度わかるかなと思ってきたけど、スマホでの閲覧率が高まり、ソーシャルメディア経由の訪問がかなりの割合を占めるようになると、全体的な傾向としては「細切れな訪問」――つまり直帰や数ページだけ閲覧するセッション――が増え、その一方で同じ日に同じ人が何度も訪問したりするため、訪問回数や訪問深度(訪問あたりPV)などでユーザーの状態を把握することがむずかしくなってきています。
 
スマホソーシャルメディアが出てくる前からその傾向はあったんだけど(それこそ滞在時間が長い=サイト動線が悪くて使いづらいとか)、このふたつがもたらした変化とは、アクセス解析を読み解くむずかしさが増したことだよね。
アクセス解析だけじゃなくRFM分析とかも解釈をアップデートしていかないといけない)
 
支持率の数値化というのは最愛戦略における最大の課題で、個人的には「(自分がやってほしい、を起点に考えた)正しいと思うことをやってれば、測定するコストがムダなので、売上推移だけ見てればいいんじゃないか」と思うものの、そんなふうに割り切れる状況はめったにないので施策実行の意思決定のためにも、継続可否の判断のためにも数値化は必要になってきます。
 

NPSがあったっけ

で、そういえばNPSってあったじゃないかと、今回会社でアンケートを実施するにあたって復習してみたら、これで十分な気もしました。
けっこう長くなったので、マーケティングis.jpにずいぶんひさしぶりに投稿してみたのがこちら。NPSとはなんぞやってことから書いてるので、よくわかんない方はぜひ。

顧客満足度は減点法で評価される傾向にあるので、フリーアンサーにも不満点が書かれることが多いです。もちろんこうした意見は貴重なのですが、結果的に欠点をなくす方向の改善がなされがちで、これは最安戦略や最高戦略を採用していたり、あるいはナンバーワン企業が2位以下の競合企業が繰り出すすべての施策をカウンターで相殺していく場合には有効なんですけど、そうじゃない企業の場合は限界が生じやすい。
また、減点法で高評価する人は論理的な判断をする人でもあるので、他社へのスイッチが少なくないともいえるから、必ずしも支持者とはいえないという問題もあります。
 
一方でNPSの場合はどちらかというと加点法での評価であり、誰かに薦めるに値するという評価は本人に責任を伴うものだから(薦めといて自分はとっととスイッチすることは考えづらい)、少なくとも満足度調査よりは支持者を把握することができる。
 
ちなみに最愛状態になるとどんなことが起きるかについては経験上知っていて、たとえばお客さんからの提案が増えるとか、メルマガなどで意見を募集した際に多くの回答が寄せられるといったものがあります。
あるいは定期的に発行していたメルマガが配信されなかったりすると「楽しみにしてるんですけどちゃんと受け取れなかったみたいなので再送をお願いします」なんてメールが届いたり(「こっちが遅れてただけです、ごめんなさい」って返事したことも)。
ほかにもソーシャルメディア上に好意的なコメントが増えるというのもありますね。
 
ちょっと前の記事ですが、ビービット遠藤さんが書かれた記事にNPSが高い(推奨者が批判者を大きく上回っている)企業には以下のような影響があらわれるとありました。
Repurchase(再購入)
初回の購入にとどまらず再度購入してくれる、あるいは購入してくれる頻度が高まる。
 
Buy additional lines(一度に買う量が増えること)
例えば、オプション製品の購入やアップセルにつながりやすい。
 
Refer others(クチコミ)
推奨者が「いいよ」と勧めれば買う気になり、批判者が「よくない」というと買う気がなくなる。近年、ソーシャルメディアの台頭によって、より重視されるようになってきている。
 
Provide constructive feedback(高い価値を感じている、推奨者からの建設的なフィードバック)
プロダクト開発やサービス改善にも応用できる。また、働いている人たちのモチベーション向上にもつながり、組織全体をパワーアップさせる。
 

まさに、ですね。
正しい母集団に正しく調査する、という前提を守ればNPSは支持率を測る指標として十分使えるんじゃないかと思いました。

とはいえNPSの調査を毎週やるわけにもいかないので(小さなサンプルに対して聞いていくというのはあるかもしれないけど)、たとえば年に1回〜四半期に1回くらいはNPSで現状を把握しつつ、週次や月次においてはやっぱり訪問頻度や滞在時間などの数字をゴニョゴニョしていくしかないんですけどね。
ここはいろんな人といっしょに考えていけるといいなと思ってます(興味がある人はぜひご連絡ください)。
 
ちなみにリンクした記事ではアメリカのNPS調査の一覧も引用したんですけど、AmazonAppleは70を超えてて(NPSは-100から100の間)、まったくもってすごいなと。日本にそんな企業あるかなあ。むかしのソニーとかは70超えてただろうけど。

ネイティブアドのKPIはシェア数でいいのか(広告の目的と効果指標)

昨日書いたイベントレポートへの反響を読んでて。
(こんなふうに反応をいただくのは牧歌的な時代のブログみたいでうれしい)

これが大事と言われればそうだろうと思うけれど、これって、広告の作品化の亜種ではないか?
「賞を取るような広告より売れる広告を!」的な事を聴くことがあるが、そのうち「バズる広告より売れる広告を」なんて言われるようになるのかしらん。

「バズる」ことが目的化しちゃったときに広告の役割や効果はどうなるんだって懸念は生まれて当然だし、ぼく自身かなり強く感じてます。
「広告の作品化」についてはもう何年も前から議論されてますし、ぼくのスタンスとしてもむかしブログに書いたけど、広告を作品と呼んだり、賞をとることが目的化しちゃうことに対してはめちゃくちゃ懐疑的です。

ただあれから年月を経て、ちょっとだけ考えをあらためたところがあるとすれば、広告の目的には直接的な売上アップだけじゃなく、いろいろあるということを踏まえるべきで、そのいくつかある目的のひとつとして「広告賞を受賞する」ということもあるんだろうということです。

広告の目的にはもちろん認知拡大や、興味・需要喚起など直接的な売り上げ貢献があり、いうまでもなくこれが主流です。
ただ、たとえば購入者満足度を高める(自分の選択がまちがってなかったと実感してもらう)ためのロイヤルティ向上を目的とした広告や、流通対策(コンビニ等での棚を確保するため)の間接的な売り上げ貢献(営業支援)も目的とした広告もあります。

UNIQLOCKを思い出した

数年前にユニクロUNIQLOCKってブログパーツを提供したんですけど、最初から広告賞を狙って企画したって話を聞きました。
かいつまんでいうと、クリックとかコンバージョン以外の目的(ありていにいうと「ブランディング」)でネット上でマーケティング施策をするのはなかなかむずかしいので、ひとつの成果や象徴として狙ったと。

これっていまのコンテンツマーケティングやネイティブ広告を検討しているマーケターが置かれている状況に近いと思うんですよね。

つか、UNIQLOCK、まだ動いてるんだね。すごいや。

いまだに動いてるブログパーツってあとは和田アキ子のやつくらいじゃないかな。

(リンク先は音が鳴るので注意)

それはさておき。

ある意味ではこれは「方便」なんだと思います。
だけど、正論だけで突破できないときに、こうした「わかりやすい数字」をもって社内を説得していくのは大事な対処だなとも思うのです。

なので、こうした反応が起こるのは当然だと思うし、これが正しいKPIなのかについては今後も考えつづけなきゃいけないと思うんですよね。

もちろん繰り返しになるけど、シェア数が目的になっちゃいけないです。
ただ、広告賞よりシェア数のほうが売上との相関が強い数字だと思うので、この数年でより望ましい状況に近づいたといえなくもないですよね。

目的があってのKPIだから、そもそも目的のバリエーションが複数ある以上、単一の指標で評価できるわけなくて、でもある程度はパターン化できるなら、汎用的な指標をつくっていくことは不可能なことじゃないと思うんですよね。

それは広告とかマーケティングの本来の効果や目的、あるいは意義について問い直すきっかけにもなりますしね。

UNIQLOCKについての話はこのときね。若いな。

シェアされる広告コンテンツに必要な3つの要素

今日は東京国際フォーラムで開催されてた「宣伝会議 AdverTimes DAYS 2015」に参加してきました。というかまだ会場で、いまはセッション間の休憩中です。

午前中のセッション「5,000人がシェアする、ユーザーに愛されるネイティブアドの作り方」の内容がじつにおもしろかったのでちょっとメモを共有します。

f:id:takeshi:20150414160729j:plain

登壇者はRettyの武田社長と、LINEの谷口さん。

Retty株式会社 代表取締役 CEO 武田 和也 氏
LINE株式会社 広告事業部 チーフプロデューサー 谷口 マサト 氏

谷口さんが書かれた記事はたくさん読んだけど、じっさいにお話されてるのを聞くのははじめてで、なんかすごく落ち着いた感じの方だった。
ネット上(とくにソーシャルメディア)で拡散するコンテンツの作り方についての話だったんだけど、とても納得のいく内容で、プロとして一定レベル以上のコンテンツを量産するためには不可欠なメソッドが話されてました。

前半はRettyの紹介で、Rettyの広告コンテンツはいわゆるまとめ型のネイティブアドで、焼肉屋リストとサントリー烏龍茶というような親和性の高いものから、神楽坂のバーとマンションという間接的に連想させるものまでいろいろやられてて、人気記事ともなると公開後数ヶ月たってもアクセスが月間数万PVとかあるらしい。

こういう広告なのに資産化して継続的に貢献できるというのは広告コンテンツの利点のひとつだよね。もっともその場合はなるだけ普遍的なブランドそのものをアピールするような内容にしていかないと陳腐化するけれど、上手につくられてるなあと思った。

後半は谷口さんとのトークになって、ここで「シェアされるネイティブ広告に必要な要素」として、谷口さんのこれまでの経験を踏まえたポイントが紹介されてました。

  1. タイトルにツッコミどころがある
  2. おもしろい or 役に立つコンテンツ
  3. コンテンツと広告の割合は7:3の比率

以下、ほとんどぼくの勝手な解釈ですけど。

「シェアされる」というのは、いいかえれば「バズる」という状態で、広告コンテンツにかぎらず、しきい値をこえて広まってしまうとネガティブな反応も当然届く。
これはかつて有吉弘行が語った「ブレイクするとはバカに見つかるということ」がすべてだし、森博嗣先生もたしか「批判的な声が届くというのはこれまでの読者層をこえて広がったということだからありがたい状態」というようなことをおっしゃってたように、不本意であっても受け入れなければならないことでもある。

だから最初からシェアされることを意識し、そこに一定のコミットをするのであれば、ネガティブな声をおそれて萎縮した表現になるのではなく、賛否両論をむしろ歓迎するスタンスで放り投げてしまうほうがいい。
言いきったほうが反応がもらえるというような話もされてたけど、主張がはっきりしているというのは伝わるメッセージの熱量が高いということでもあるので、正しい考え方だなと思った。

脇が甘いというツッコミ余地ではなく、脇が甘く見えることすらも計算尽くで、エクスキューズだらけで冗長な表現になるくらいなら、明確に言い切るという選択は正しいと思う。

次の「おもしろいか、役に立つ」というのは松浦弥太郎さんの言葉である「ほんとうだから 役に立つ、 役に立つから、 おもしろい。」じゃないけど、あらゆるコンテンツを考える上で大事な視点ですよね。

ぼくもむかしブログに「楽しいか、便利か、なきゃ困るか」って書いたけど(いま探したら2008年だったか)、正確には登山口として「楽しい」ルートと「便利」ルートがあり、その到達点として「なきゃ困る」という状態(山頂)があるという捉え方で、その後の「習慣化」などの話もこの「なきゃ困る」を言い換えただけ。

グーグルは最初「便利」だったけど、いまや「なきゃ困る」というインフラ状態になっているように、関係づくりには時間軸があって徐々に密になっていくと考えれば、「おもしろいか、役に立つ」というのは完璧な整理だと思う。
(まあ自分と同じ意見だから完璧と評価してるみたいで恥ずかしいけど)

3点目の比率の話は、その割合のことよりも、「広告とコンテンツには明確に一線を引くべき」という主張のほうが印象的だった。
見抜かれちゃうし、作為的なコンテンツと思われた時点で終わりだよねってことなんだけど、ネットの空気を熟知されてる方のコメントだなと思った。

f:id:takeshi:20150414142328j:plain

f:id:takeshi:20150414142332j:plain

「真剣にふざける」というか、こういう軸がしっかりしているからこそあれだけのコンテンツをつくりつづけられるんだなあと軽く感動した。

最後はRetty武田さんによる「シェアされて、ユーザーにも愛される広告コンテンツ」についてのまとめ。

f:id:takeshi:20150414142216j:plain

タイトル、コンテンツ、広告メッセージ全てにおいてユーザー体験を追求し、設計されている

結果、ユーザーが自らシェアする

これこそ、スマホ時代の“新しい広告のかたち”であり、これから求められる広告

スマホ時代というよりはスマホ×ソーシャルな時代というほうがより正確だと思うけど、右脳(おもしろい)なり左脳(便利、役に立つ)なりに響いて、ちゃんと頭で理解されたコンテンツがシェアされ、最終的には心にまで届いたコンテンツが愛されるんだろうね。

そういうことを実績を積み重ねて自ら解体・解釈しなおして、ある程度フォーマット化していくことで量産できるような状態にしていくというのはマーケティングやコミュニケーションに携わるすべての人がこれから意識していかなきゃいけないスキルだろうなあ。
(もちろん自分でやるか、他の人に手伝ってもらうかの判断も含めて。というかその判断ができる程度のスキルは必要)

そのあとに聞いたビービット宮坂さんのカスタマージャーニーについてのセッションもおもしろかったし、今回のイベントは登壇者が話し慣れていて、(1コマがだいたい30分と短いこともあり)要点が整理されていて、わかりやすいものが多い。

ぼくもがんばんなきゃなーって思った。

スマホのホーム画面百景

まったく別の話だけど、さっきの「ねこあつめ」の記事を書こうとして自分のホーム画面のキャプチャを撮ったんだけど(けっきょく使わず)、他人のホーム画面をただひたすら見ることができるサイトとかあるといいんだけどなー。

むかしカイさんが「デスクトップ百景」って企画をやってらして、ぼくも書かせてもらったことがあるんだけど、あれ超おもしろかったんだよなあ。

f:id:takeshi:20150410164053j:plain

デスクトップって、その人のパソコンに対するスタンスがわりと出るし。

なぜそのアプリを? とか、なぜその位置に? とかいろいろ聞きたい。

誰かやってくれませんかね?

f:id:takeshi:20150410132738p:plain

すごいとウワサの「ねこあつめ」の広告表示を見てみたらめっちゃかわいかった

「ねこあつめ」ってアプリの広告の入れ方がすばらしいとツイッターで流れてたのでさっそく入れてみました。
ネコは好きだしアプリも知ってたけど、インストールはしてなかった。

起動してみる。

f:id:takeshi:20150410132841p:plain

かわいい。

で、いきなり広告が表示されるわけじゃなくて、とりあえずボールとかカリカリとかを指定されて場所に置くと、起動するたびにネコが遊びに来てくれる。
(ここまでを朝やった)

設定画面。左上の「メニュー」を押せば出てくる画面。これがいつもの状態。

f:id:takeshi:20150410153942p:plain

ここに広告が表示されます。さっき見たら広告が届いてたのでキャプチャ。

広告が届くのを待つってのもなんかおかしな気分だけど、まあとにかく見てみてください。たしかにみんなが褒めるのもよくわかるので。

f:id:takeshi:20150410133404p:plain

f:id:takeshi:20150410133005p:plain

f:id:takeshi:20150410133012p:plain

広告はスマートニュースなんだけど(ここはもっと世界観にあったものだといいんだけどね)、不快感が最小化された広告表示方法ではある。

ネコがチラシを持ってくるという表現はうまいよねえ。

ほとんどのユーザーには嫌われないと思うし。

ただまあこれって「押すかな?」という懸念があって、最初は物珍しいから押すんだけど、だんだん押さなくなっていくし、この手の広告ってクリックとかその後のインストールでお金が支払われるので(だからこそみんな誤クリックを誘発させるような出し方をするんだけど)、結果として収益化に貢献できないんじゃないかなと思ったり。

チラシを見せるだけなら「見たら【にぼし】プレゼント」とかでやれそうな気がするんだけどねえ。

ウザくない広告表示で、それでいてそこそこ収益に貢献できるというのはなかなか同時解決がむずかしい問題だけど、広告主選びや広告クリエイティブそのものの表現含め、こういうアイデアあふれる方々がうまいことクリアしてほしいなあ。

応援してます!

p.s.
つか、インストールしようとAppStoreで検索したら偽物のアプリがいくつかあって、なんというか闇が深いなと思った。

[追記20150416]
今日ランチしててこの話になったんだけど、スポンサードアイテムのほうが広告主のブランドとユーザーを近づけてあげられるんじゃないかな。

たとえばベタにモンプチをごはんとして使えるとか、銀のさらのお寿司をネコにあげられるとか、あるいはNボックスのミニカーをおもちゃにするとか、ヤマト運輸ダンボールを家にするとか(これはトラックの絵柄にそって切り抜いてじっさいにやってる人がけっこういる)、ブランド名が入ったアイテムを用意することでチラシを見てもらうよりもたくさん露出できるし、ブランドへの愛着もわくんじゃないかなあ。
そのアイテムが写ったキャプチャがシェアされることも予想できるし。

ネイティブアドの健全な発展に向けて

CNET Japanにネイティブアドの現状についてのインタビュー記事が掲載されてました。

雑感としては、(きわどいところに踏み込むからではあるものの)これまでは軽視されてきていた「消費者保護」に対してちゃんと考えて、ガイドラインも設けて守っていこうとする姿勢はすばらしいことだと思いました。
ほんとがんばってほしい。

もちろんあくまでも「自主ガイドライン」であって、これには強制力はないので、守らない企業が出てくるのは当然あると思う。
だけど、ステマやペイパーポストのときと同じで、そういうところにお金を渡さないようにして抑制するしかない。彼らは儲からなければ撤退するし。そう考えれば、これはお金を出す側の問題ともいえる。

けっきょく浄化するなら汚染水を流すなって話になってしまうんだけど、その汚染水を止めるには工場のオーナーが考えを改めなければならないんだよね。

以下、内容について。

ネイティブアドの品質審査

ネイティブアドの定義として、「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告」というのはやっぱり中身次第だなと思うわけです。中身がスカスカだとユーザーの情報利用体験を妨げちゃうので。

記事広告タイプであれば読了率や滞在時間、バナータイプであればCTRやクリック後の直帰率などが、ほかのコンテンツと同程度の水準にあるのかが重要で、そういう指標を媒体側も広告主も双方が意識していかなければ媒体の価値も毀損するし、広告主のブランド形成もうまくいかない。

AdWordsはスコアによって、その品質の部分をある程度担保しようとしてるけど、ネイティブアドの場合は広告審査や編集責任でもって、そこをきちんと見ていかないとたとえガイドラインが守られたとしても、ユーザーに嫌われる存在になってしまう。

あと、だからといって表面的な数字をつくるために安易にお笑い系のおもしろコンテンツに偏ってしまうのも、そもそも中長期的な効果を狙うことが多いネイティブアドにとっては本末転倒になるし、広告コンテンツの企画制作ってほんとむずかしいよね。

インターネットの信頼性は低いのか

途中、JIAA常務理事の長澤秀行氏が次のようなことを発言されています。

求めている内容は、すでにマスメディアは当然のこととしてやっていることだ。それが一部のネットメディアはできていない現状がある。

「マスメディアは当然のこととしてやっている」といっても、バーターはじめグレーゾーンなやり方はいろいろ存在してるわけで、単純に「マスはできてて、ネットはできてない」という話でもないですよね。ちゃんとやってる企業はマスにもネットにもいるし、やってない企業も同じようにどちらにもいる。
まさに長澤氏の指摘どおり「一部の」ネットメディアができてないというだけ。

途中に出てくるメディアの信頼度の調査結果にしても、「テレビ」や「インターネット」と聞かずに、「NHK」や「Yahoo!」として聞いたらまたちがった結果になったようにも思います。
(というかこのグラフって「インターネットが信用されてない」ってことよりも、2013年にはインターネットが新聞を上回ってるかもしれないほうが気になるよね)

f:id:takeshi:20150409201929p:plain

(引用:CNET Japan ※一部加工)

引用元にある注記:
【提供:東京大学大学院情報学環・橋元良明氏】2012年調査(N=3000):「世の中の出来事や動きについて信頼できる情報を得る」ために使われるメディアの推移。図のような結果だが、個別に信頼度を尋ねた場合には「新聞」が最も信頼度が高いという。橋元氏は「他のメディアとの選択で、コストの関係から、実際には新聞を読まない、ということ」と説明する。

ちなみに同じようなデータを探してみました。
総務省の「平成25年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」です。
(「情報通信白書(平成26年版)」にも引用されています)

f:id:takeshi:20150409202032p:plain

(引用:総務省|「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(速報)の公表

これによれば「世の中の動きについて信頼できる情報を得る」のために利用するメディアは新聞がいちばん高く、ついでテレビ、インターネットは低めです。

もっとも「インターネット」という言葉のイメージは人それぞれなので(新聞やテレビに比べると個人差が大きいと思われる)、なかなか評価がむずかしい結果ではあります。

まあともあれ、インターネット全体の信頼性はさておくとしても、ひとつでも多くのメディアが「信頼できる」存在にならなければと思いますし、そうすることによって「インターネットにも信頼できるメディアと、そうじゃないメディアの両方がある」という事実が正しく理解されるのだと思います。
ネイティブアドの議論がそのきっかけになればいいですね。

そういう意味では最終ページにある、講談社ライツ・メディアビジネス局次長でネイティブアド研究会の座長を務める長崎亘宏氏のコメントはそのとおりだなと思いました。

今回の改訂したガイドラインは、ガツガツ取り締まるというよりも「ネイティブアドに関わる企業がスタート地点に立つために整備をした」というのが現実的な見方。各企業が主体的にスタートラインを作っていく、そこにみんなで並ぼうという状況だ。まだまだスタートラインに立っていただいていない企業もあるし、そのスタートラインへの立ち方がわからない企業もある。本当にまだまだ始まったばかりだ。

個人的にはこの問題を解決するにはネイティブアドの価格がもっと高くなっていかなければならないと思ってます。
そうすれば出稿する広告主が減るからネイティブアドだらけの事態は避けられるし、1本の記事にお金をかけられるから(広義における「おもしろい」)クオリティの高いコンテンツをつくれるし、それによってブランドのメッセージが読者にきちんと届き、読者にとっても媒体にとっても広告主にとってもハッピーな状況が生まれる(可能性が高まる)。

もっともネット広告は常に価格が安くなるほうに引っ張られるから(なぜなら枠が無限に増えていくから)なかなかむずかしいとは思うけど、いまがスタートラインだからこそ大事に育っていくといいのになあ。

 

愛される努力よりも嫌われない努力を(コンテンツマーケティングはあくまでも手段)

コンテンツマーケティングのブームはまだまだつづきそうですね。
で、失敗事例も散見されるようになったこともあり、ちゃんとポリシーやコンセプトを定めてからはじめよう、運営体制もしっかり考えようという企業も増えてきたようです。
 
ぼくの最愛戦略のスライドもいまだに見ていただいていて、「どうすれば愛される企業になれますか」なんて相談もちょくちょくいただいてます。

(数年かけて加筆しつづけたスライドなのであと数年は使えるんじゃないかなあ)
 
最愛戦略において「愛されている」というのは目指す状態であり、結果にすぎません。
よほど条件的に恵まれていないかぎり、「よーし愛されるぜー」と思っても愛されないと思うのです。
 
最近はリハビリも兼ねてコンテンツマーケティングのセミナーにも参加しているのですが、「消費者に愛されるように」とか「顧客をファン化するために」なんて言葉をよく聞きます。
MA(マーケティングオートメーション)のセミナーでよく出てくる「顧客を育成する」という話もそうですが、ぼくはあれ無理だと思うんですよ。
 
だって自分がお客さんだったら望まないでしょう。
(かつての「顧客を囲い込む」って呪詛の言葉の繰り返しですね)
 
そもそも絶対愛される法則なんてないのです。
便利な情報を毎日アップしたら愛されるわけでもないし、人間味を出したからといって愛されるとはかぎらない。おもしろコンテンツが愛の獲得につながらないことはつい先日のエイプリルフール企画の死屍累々が教えてくれてますよね。
 
ぼくらが自覚的にせいぜいがんばれるのは「嫌われない」努力くらいです。
 
いや、ちょうど今日散髪してて、「もみあげどうしますか? 長めにしときますか?」って聞かれたんですよ。
1秒は考えましたね。
で、「ふつうでいいです」と答えたんだけど、40歳のオッサンが意識すべきは清潔感であって、無難上等だなと。長めのほうがオシャレなのかもしれないけど、そこで冒険するのは判断としては正しくないなと思ったんです。長い1秒だな。
 
ま、このたとえが適切かはさておき、いいかえれば「チャンスを未来に残す」ということなんだと思います。
嫌われなければ、いつか愛されるかもしれないという。
「好きの反対は無関心」って言葉があって、あれは真実だと思うんだけど(そもそも興味がないというのは好き嫌いを問う段階にたどり着いてないわけで)、だからといって無関心より嫌いのほうがマシだって話にはなりません。
 
「愛されなくっちゃ」と肩にチカラを入れたところでつづきゃしないし、そもそもその気持ちは空回りするばかりです。
だったらまずは「嫌われない」ことだけを意識して、丁寧にコミュニケーションを積み重ねていけばいいんじゃないかなと。

(オマケ)じゃあどうすれば最愛になれるのか

以下は蛇足というかオマケです。
 
じゃあなにをがんばるのか。
それはもう企業ごとにちがうんです。ぼくが相談を受けた際にいつも聞くのは「いまいるお客さんはあなたの会社のどこを支持してくれてるの?」って質問です。
そこを強化すればいいんです。
 
結果、コンテンツじゃないよねって話は多々あります。
(感覚的には半分以上はそういう結論になってた気がします)
 
居心地のいい店づくりが支持されてるなら営業時間を延ばすことがより多くの支持につながるだろうし、コールセンターに電話をかけてすぐつながることが支持されているなら予算はスタッフの増員に投下すべきです。
もちろんだからといって必ず愛されるとはかぎりませんが、それでもコンテンツマーケティングに手を出すよりは勝率の高い選択だと思います。
 
愛されるためにコンテンツマーケティングをするとか、SEOとしてコンテンツマーケティングをはじめるというのではなく、「コンテンツが支持されているから」もっともっとコンテンツに力を入れる、という順序であるべきで、それは当事者にとってはコンテンツマーケティングとは呼んでないと思うんですよ。
もっと切実な生命線だから。
 
ネット上に企業がお金をかけた良質のコンテンツがたくさん生まれることはすばらしいと思います。
でもそれはほんとうにあなたが会社の予算を使ってつくるべきものだったのかについては冷静に考えてみてもいいかなと。

ソーシャルメディアにはコンテンツそのものを流すべきなのか

BuzzFeedのCEO、Jonah Perettiが「ソーシャルメディアには、情報へのリンクではなくコンテンツそのものを流すべき、なぜならソーシャルメディア上のインプレッションのほうが数字としてははるかに大きいから」とSXSWで語ったとされる記事が公開されてから、すでに1ヶ月近くが経過していますが、個人的にはいまなお頭の中でひとりディスカッションがつづいているホットなトピックです。
 
ひとりで思考するのも悪くないけど、そろそろこういうテーマで雑談しあえる仲間を募りたいなと思って、ちょっと吐き出してみようと思います。

この記事が示しているのは各ソーシャルメディアから自社サイトへの流入数よりも、配信先であるソーシャルメディアそのものでのインプレッションのほうが数十倍も大きいので、Facebookツイッターにコンテンツそのものを投稿してその場で読んでもらうことに注力したほうがいい、というものです。
 
具体的な数字も紹介されています。
Twitter経由で獲得するリファラルのトラフィック(月間)は1250万で、Pinterestからは6000万、そしてFacebookからは3億4900万を獲得しているのだそうだ。

リファラルによるトラフィックは、コンテンツ閲覧者に比べると非常に小さな数字となっています」と言っている。確かに、インプレッション数を見るとTwitter上で8億4700万、Pinterestで60億、そしてさらにFacebookでは113億という数字になっているのだ。

 整理すると次のようになります。

 
リファラル(流入数)
インプレッション数
 差
3億4900万
113億
32.4倍
1250万
8億4700万
67.8倍
Pinterest
6000万
60億
100.0倍
 
記事中にあるスライドの円の大きさのインパクトもすごいですけど、こうして倍率を割り算して出してみてもたしかにすごい差です。
(BuzzFeedのツイッターアカウント @buzzfeed は215万フォロワーもいることを考えれば流入数が少ないような気もするけど)
 
じっさい、ほとんどすべての企業アカウントは自社サイトへのリンクを本文のサマリーやリード文をつけて投稿していると思います。
もしかしたらリード文も用意せず、記事の冒頭100文字をRSSから切り取って自動投稿しているケースもあるんじゃないでしょうか。
 
BuzzFeedでは「Share Statement」と呼んでいるソーシャルメディアに投稿する際に付与するテキスト(見出し)は、記事のもともとの見出しなどよりも重視視されているそうです。
なぜならこの文章によってシェアされるかどうかが大きく左右されるからです。
 
先日、NewsPicksに掲載された記事では、この部分は複数のパターンのA/Bテストを実施して、自動的に最適化される(=成績のいいものが選ばれる)と書いてありました。
(おそらくは訪問者あたりのシェア率が最大化するようにチューニングしてるんでしょうね)

記事は見出し、写真、本文という構成ですが、本文はそのままで、見出しと写真は最大12パターンも作ります。そして、そのすべてのパターンを配信し、数時間モニタリングします。最もクリック、シェアされたパターンが判明すると、記事をそのパターンにすべて差し替えるのです。これらのプロセスは、すべて自動化されています。
こうした取り組みを通じて拡散率(シェアされる割合)を高め、それによってインプレッション=リーチを最大化するという全体の方針があっての冒頭の発言であることは認識しておくべきでしょう。
 
話をTechCrunchの記事に戻すと、「リンクではなくコンテンツそのものを配信すべき」というPerettiの主張は、BuzzFeedがネイティブアドによって収益を上げているからだろうとまとめられていて、読者の反応もおおむね同じような感じでした。
(バナー広告の場合は自社サイトに誘導しなければ1円の売上にもならないけど、ネイティブアドなら基本的にはインプレッションさえ稼げれば場所は問わないので)
 
たしかにそれはそのとおりなのですが、ぼくはこの議論はオウンドメディアの成長戦略や、コンテンツマーケティング全体のテーマとして議論されるべきなんじゃないかと思ったのです。

PVよりもリーチのほうが重要なのはほんとうか

まず大前提として「(誘導のためのリード文やサマリーじゃなく)全文配信できるのか」という問題はありますよね。
じっさいツイッターに投稿できる文字数はかぎられていますし、投稿できる文字数に制限のあるサービスは少なくありません。
 
また、「自社サイトと配信先のソーシャルメディアで読了率は変わらないのか」という問題もあります。
経験的にはFacebookのニュースフィードに流れてきたとしても「もっと見る」を押してわざわざ全文表示するケースは少ないですし、スマホで閲覧している場合などは結構なスピードでスクロールするのでほとんど認識すらできてないケースもあって、なんとなく読了率は低くなりそうな気がします。
 
こうした検討や確認すべき課題はあるものの、思考を先に進めます。
 
見てくれる人が多ければ多いほどいい」というのはオウンドメディアにも当てはまりますよね。
オウンドメディアの場合も(BuzzFeedとは理屈はちがえど)バナー広告を見せる必要はないわけですから、いちいちサイトに誘導しなくてもソーシャルメディア側で商品の認知やブランドの好意度向上が達成できるならそれでもかまわないはずです。
(ただしECに誘導するなどサイト内の特定のページに回遊させることが目的のオウンドメディアの場合はあてはまりませんが)
 
もしほぼ同じボリュームのコンテンツを配信できて、読了率にいちじるしく差がなければ、メディアの目的やマネタイズ手法によっては――つまりバナー広告表示やサイト内遷移などの制約がなければ――、PVよりもリーチのほうが重要だといえるケースが存在しそうです。
 
このケースにおいてはネイティブアド(スポンサードポストや記事広告型)の出稿や、ポータルサイトやキュレーションメディアへの記事配信も積極的にやればいいと思います。
 
いちおう触れておくと、このこと自体はなにも新しい話じゃなく、従来から「ワンソース・マルチユース」として語られてきたものです。

なぜBuzzFeedは実践してないのか

しかしここで気になる事実があります。
 
とうのBuzzFeedのFacebookページを見てみましたが、全文を投稿しているわけではなく、しかも投稿時のテキストも「The Titanic hadn't even been built yet.」だけというように、ごくごくあっさりしたものでした。
これではFacebookだけで内容は理解できませんし、とてもコンテンツそのものが配信されているとは思えません。

f:id:takeshi:20150407174051p:plain

なぜBuzzFeedは「コンテンツそのものを流すべき」といいつつ自ら実践していないのでしょうか。
 
まだ検討中だから?
広告主の理解が得られてないから?(ソーシャルメディア上の露出を等価値と認められないから?)
 
自社のオウンドメディアの取り組みとして検討するにしても、ここを考えておかないと大失敗につながりそうです。
 
その一方で「NowThis News」という新興メディア(BuzzFeedも十分、新興メディアなんですけどね)は自社メディアを完全に廃止して、すべてのコンテンツをソーシャルメディア側にだけ置くように方針転換したそうです。
(参照:分散メディア革命/NowThis News が示す Webサイト消滅への道 | 藤村厚夫 Media Disruption

f:id:takeshi:20150408090723p:plain

これは「NowThis News」のコンテンツが「動画」だからやりやすかったということなのかもしれません。
(だとすればテキスト中心である大半のオウンドメディアはBuzzFeed同様、思考実験にとどめておくべきなのかもしれませんね)
 
ソーシャルメディアやネイティブアド、あるいはキュレーションメディアなど、コンテンツそのものを外部配信することが容易になったいま、昨日までの常識にとらわれて「自社サイト以外にコンテンツを出さない」と決めつけるのは危険だと思います。
しかし、簡単に結論を出せるテーマでもなさそうです。
 
結論のないままの投稿になっちゃいましたが、今後も継続して考えたいテーマだと思ってるので、興味のある方は連絡ください。
 
p.s.
以前より「分散型BuzzFeed」については「SmartNews」の藤村さんのブログでも触れられていましたが、今回の内容はこれを読んだときからずっと考えてきているテーマでもあります。

おもしろき こともなき世を おもしろく すみなしものは 心なりけり