いまさっき思ったこと

あとで読み返したときになにかが生まれるかもしれないし、生まれないかもしれないけど、それはそれでいい

ネイティブアドの健全な発展に向けて

CNET Japanにネイティブアドの現状についてのインタビュー記事が掲載されてました。

雑感としては、(きわどいところに踏み込むからではあるものの)これまでは軽視されてきていた「消費者保護」に対してちゃんと考えて、ガイドラインも設けて守っていこうとする姿勢はすばらしいことだと思いました。
ほんとがんばってほしい。

もちろんあくまでも「自主ガイドライン」であって、これには強制力はないので、守らない企業が出てくるのは当然あると思う。
だけど、ステマやペイパーポストのときと同じで、そういうところにお金を渡さないようにして抑制するしかない。彼らは儲からなければ撤退するし。そう考えれば、これはお金を出す側の問題ともいえる。

けっきょく浄化するなら汚染水を流すなって話になってしまうんだけど、その汚染水を止めるには工場のオーナーが考えを改めなければならないんだよね。

以下、内容について。

ネイティブアドの品質審査

ネイティブアドの定義として、「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告」というのはやっぱり中身次第だなと思うわけです。中身がスカスカだとユーザーの情報利用体験を妨げちゃうので。

記事広告タイプであれば読了率や滞在時間、バナータイプであればCTRやクリック後の直帰率などが、ほかのコンテンツと同程度の水準にあるのかが重要で、そういう指標を媒体側も広告主も双方が意識していかなければ媒体の価値も毀損するし、広告主のブランド形成もうまくいかない。

AdWordsはスコアによって、その品質の部分をある程度担保しようとしてるけど、ネイティブアドの場合は広告審査や編集責任でもって、そこをきちんと見ていかないとたとえガイドラインが守られたとしても、ユーザーに嫌われる存在になってしまう。

あと、だからといって表面的な数字をつくるために安易にお笑い系のおもしろコンテンツに偏ってしまうのも、そもそも中長期的な効果を狙うことが多いネイティブアドにとっては本末転倒になるし、広告コンテンツの企画制作ってほんとむずかしいよね。

インターネットの信頼性は低いのか

途中、JIAA常務理事の長澤秀行氏が次のようなことを発言されています。

求めている内容は、すでにマスメディアは当然のこととしてやっていることだ。それが一部のネットメディアはできていない現状がある。

「マスメディアは当然のこととしてやっている」といっても、バーターはじめグレーゾーンなやり方はいろいろ存在してるわけで、単純に「マスはできてて、ネットはできてない」という話でもないですよね。ちゃんとやってる企業はマスにもネットにもいるし、やってない企業も同じようにどちらにもいる。
まさに長澤氏の指摘どおり「一部の」ネットメディアができてないというだけ。

途中に出てくるメディアの信頼度の調査結果にしても、「テレビ」や「インターネット」と聞かずに、「NHK」や「Yahoo!」として聞いたらまたちがった結果になったようにも思います。
(というかこのグラフって「インターネットが信用されてない」ってことよりも、2013年にはインターネットが新聞を上回ってるかもしれないほうが気になるよね)

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(引用:CNET Japan ※一部加工)

引用元にある注記:
【提供:東京大学大学院情報学環・橋元良明氏】2012年調査(N=3000):「世の中の出来事や動きについて信頼できる情報を得る」ために使われるメディアの推移。図のような結果だが、個別に信頼度を尋ねた場合には「新聞」が最も信頼度が高いという。橋元氏は「他のメディアとの選択で、コストの関係から、実際には新聞を読まない、ということ」と説明する。

ちなみに同じようなデータを探してみました。
総務省の「平成25年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」です。
(「情報通信白書(平成26年版)」にも引用されています)

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(引用:総務省|「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(速報)の公表

これによれば「世の中の動きについて信頼できる情報を得る」のために利用するメディアは新聞がいちばん高く、ついでテレビ、インターネットは低めです。

もっとも「インターネット」という言葉のイメージは人それぞれなので(新聞やテレビに比べると個人差が大きいと思われる)、なかなか評価がむずかしい結果ではあります。

まあともあれ、インターネット全体の信頼性はさておくとしても、ひとつでも多くのメディアが「信頼できる」存在にならなければと思いますし、そうすることによって「インターネットにも信頼できるメディアと、そうじゃないメディアの両方がある」という事実が正しく理解されるのだと思います。
ネイティブアドの議論がそのきっかけになればいいですね。

そういう意味では最終ページにある、講談社ライツ・メディアビジネス局次長でネイティブアド研究会の座長を務める長崎亘宏氏のコメントはそのとおりだなと思いました。

今回の改訂したガイドラインは、ガツガツ取り締まるというよりも「ネイティブアドに関わる企業がスタート地点に立つために整備をした」というのが現実的な見方。各企業が主体的にスタートラインを作っていく、そこにみんなで並ぼうという状況だ。まだまだスタートラインに立っていただいていない企業もあるし、そのスタートラインへの立ち方がわからない企業もある。本当にまだまだ始まったばかりだ。

個人的にはこの問題を解決するにはネイティブアドの価格がもっと高くなっていかなければならないと思ってます。
そうすれば出稿する広告主が減るからネイティブアドだらけの事態は避けられるし、1本の記事にお金をかけられるから(広義における「おもしろい」)クオリティの高いコンテンツをつくれるし、それによってブランドのメッセージが読者にきちんと届き、読者にとっても媒体にとっても広告主にとってもハッピーな状況が生まれる(可能性が高まる)。

もっともネット広告は常に価格が安くなるほうに引っ張られるから(なぜなら枠が無限に増えていくから)なかなかむずかしいとは思うけど、いまがスタートラインだからこそ大事に育っていくといいのになあ。

 

おもしろき こともなき世を おもしろく すみなしものは 心なりけり